笑顔をつなぐ
皆さんこんにちは。暑い暑いと言っていた夏が過ぎたと思った途端、秋雨前線が居座って今年も西日本に大雨被害をもたらしています。中国、インド、その他のエリアでも工業化はますます進みますから、予期しない異常気象が常態化するのを心配しないわけにはいきませんね。
さて、この夏。私の中で印象的なキーワードは「笑顔」です。全英オープンゴルフで優勝した渋野日向子選手のことをご存知の方は多いでしょう。トレードマークは笑顔。私は日本人がトップ争いをしているというので中継を見始めてにわかに知りました。海外メディアは彼女をスマイルシンデレラと称して、このツアーでの活躍を伝えました。サインには笑顔で応え、ギャラリーとはハイタッチ、果ては使用中のグローブを子供にプレゼントするなど、緊張とは無縁なプレーやふるまいの連続。まさにニュータイプです。優勝争いの緊張感はないのか?初めての海外ツアーというから無欲なのか?いずれにしても彼女の笑顔が世界中を魅了して一躍ゴルフ界のアイドルになったことは間違いありません。
笑顔つながりで言えば、夏の高校野球でも笑顔が目立ちました。岡山学芸館は「笑顔でプレー」することが徹底事項とのこと。他のチームでも、緊張した場面、三振をしたとき、エラーをしたときですら笑顔を切り替えのスイッチにしているようでした。ネットで検索してみると、高校野球の笑顔については賛否が分かれているようで、否定側の多くの意見は、"見ていて違和感がある"。作り笑いのように見えるとか、失敗して笑うなんて真剣さがないとか。見る側がそう受け止めるのは普通で、私もその意見は理解ができます。ただ、笑顔の効用を学び、活かそうとしているなら違った見方もできる。スポーツは昔と違い、科学的なトレーニングやデータを駆使した高度な戦略展開が図られています。また、メンタル面では笑顔の効用が必ず説かれます。失敗した時にうなだれるのは反省の姿としては普通ですが、その後のプレーを考えるなら、「これでよし、次!」と切り替える方が良策とする考え方です。
ペンをくわえて漫画を読む方が、何もしないで読むよりも面白くなる。これは有名な実験結果ですが、「ペンを加える=笑っている顔」と脳が判断するとき、生理的に前向きさを支える機能を働かせ、身体能力をそがずにすむ合理的な理由があるそうです。脳は状況でなく表情で身体を動かす科学。彼らは肉体的にも精神的にも最新の学びを得て、観ている私たちに笑顔も含めて常識を越えるプレーを見せてくれているのかも知れません。 反対の例は「消えた天才」というTV番組で紹介されていました。14歳で全日本体操選手権を制した大畠佑紀選手。小学校、中学校、そして選手権の映像では、緊張する他の選手の中で彼女だけ、まるで遊園地にでもいるような明るい笑顔、観客席に手を振る姿が映っています。体操界もマスコミも新星の登場に大騒ぎでしたが、未来を担う逸材と期待されていた彼女はその後オリンピックに出場することもなく、18歳で体操界から姿を消しました。番組で彼女はこう話しています。「挑戦して、練習すればできるようになる。当時は単純に体操が楽しかった。」それが日本一になった途端、メディアに取り上げられ、次の優勝を期待される。彼女の中で体操をする目標が、「人に勝つことに変わった」。以来、勝てなくなる。ライバルの演技に「落ちろ!失敗しろ!」と念じる場面すらあったとか。当時の映像に、もはや笑顔も手を振る元気な姿もありません。競技スポーツの厳しい一面です。
冒頭の渋野選手も、当分は周囲が騒がしいだろうからちょっとかわいそう。でも、そこはプロ。持ち前の笑顔のまま乗り越えて欲しいな。スポーツの感動をもらって「よし!私も」と笑顔になる私たち。当社の仕事においても幸せな生活シーンづくりを笑顔でつないでいきたいです。
プラスデコ代表 原田 学